プログラムについて
ブレイン情報アーキテクトとは
ゲノムから脳、個人・社会に至る多様な時空間スケールの脳情報に対し、センシングやシミュレーション技術を駆使して脳科学の様々な課題解決に直接結びつけるとともに、この脳に学んだ新しい原理を新規のエレクトロニクスデバイスや情報処理方式に展開できる能力をもつ人材を「ブレイン情報アーキテクト」と呼びます。このような世界の産業界や学界で活躍できるブレイン情報アーキテクトを育成することが本プログラムの目的です。
ブレイン情報アーキテクトの背景
情報エレクトロニクスの発展は、現代社会に著しい変化をもたらしています。特に、情報ネットワークは機器と機器、人と人とをつなぎ、それ自身が巨大な情報元として、社会の根幹技術の中で欠かせない存在となっています。しかし、こうした情報化の流れはシステムの長大化・巨大化と情報ダイナミクスの複雑化、環境負荷の増大、デジタルデバイドの拡大をもたらしています。
こうした問題に対し、情報化社会を支える様々な技術を、情報利用の様々な立場から捉え直す必要性が指摘されています。すなわち、単に情報を高速に効率的に伝送・蓄積・利用するための技術のみならず、「人間あるいは社会(組織)としての認知、理解、意思決定、行動などに対する科学的理解に立脚した情報エレクトロニクス」という新しいパラダイムへの転換が強く求められています。このことは、科学技術分野での新しいチャレンジであることはもとより、中・長期的な視点からは日本の科学技術の国際競争力を抜本的に強化発展する施策としても極めて重要と思われます。
私たちが目指す情報エレクトロニクスのパラダイムシフトは、従来の情報科学や情報技術の延長では達成が困難です。そこで、莫大な情報の泉としての脳を、ゲノムなどのミクロな領域から社会(組織)のマクロな領域に至る極めて広範な領域の中で深く探求することで(学び)、その機能やシステムに学んだ革新的情報科学技術の構築が不可欠と考えます。実際、欧州ではHuman Brain Project (HBP) と呼ばれる国家プロジェクトが巨額の予算(10年間で約12億ユーロ)が投じられ始動し、時を同じくして米国においてもBrain Activity Map Projectが立ち上がろうとしています。Human Genome Projectに38億ドルが投じられ、約8,000億ドルの経済効果が得られたように、ポスト・ゲノムとしての脳科学は新産業を創出するイノベーションの原動力として期待されるとともに、人間理解に基づいた社会価値体系再編の規範として世界中で活発に推進されるようになってきました。
本学は、異分野融合ならびにアカデミア・産業界連携という問題意識の下、H21年度から博士後期課程学生を対象とする「テーラーメイド・バトンゾーン教育」を展開しています。その中で、わが国の産業界をリードする多くの企業トップリーダーとの継続的な連携議論を行ったところ、情報化社会を支える様々な技術を情報利用の様々な立場から捉え直すことが、わが国が解決しなければならない重要な課題の一つとしてクローズアップされてきました。そして、この課題を解決するためには、情報エレクトロニクスを駆使した脳科学研究の推進、および脳科学を飛躍的に加速させる情報エレクトロニクスを支える人材養成と、その関連産業分野への振興が不可欠であるとの認識に至り、国内外の産業界・研究期間と連携・協働して新しい博士人材「ブレイン情報アーキテクト(先端情報エレクトロニクスにより脳科学を深化させ、また脳に学んだ革新的テクノロジーを生み出すことができる技術系研究者)」を養成することが急務であるとの結論に至りました。